10/25/2015

置きチラ

皆さま、「置きチラ」という言葉を知っていますか?
おそらく、ご存じないでしょう。
なぜなら、私が勝手にそういう造語をしているからです。

園芸専門店やホームセンターに行くと、よく、Tillandsia xerographica(通称:「キセログラフィカ」「キセロ様」)がたくさん売っています。
CITESⅡに指定されているはずなのですが、輸出許可が簡単に出るからか、大量に出回っていますね。
寒さに注意すれば簡単に栽培できるうえ、非常に美しい植物なので、人気があるのも納得です。
残念ながら、一部の小型種以外は周年屋外栽培が可能な植物のみ育てるようにしているため、我が家にキセロ様はありません。

そのキセロ様は、大体、棚等の上に鎮座し、買ってくれる人を待っておられますが、葉の先の方が下方に巻き込んでおり、自らの体重を支える座布団のような働きをしていると思います。
そのような形状をしたチランジアのことを、私は「置きチラ」と呼んでいます。

我が家で「置きチラ」を目指しているチランジアは、これです。
















Tillandsia latifolia var. leucophylla です。
一目見ただけで植物名の分かった方は、かなりのチランジア通だと思います。
他の T.latifolia は普通に入手できると思いますが、この植物はなかなか目にすることがありません。
本変種は、上品な素肌と分厚い葉が魅力的だと思います。
















3年前に我が家に来たときは、結構ボロボロの状態でやってきました。
しかし、成長が意外に早く、ボロボロの葉は一掃され新しい葉に生え変わってきています。
2年前に2株追加導入しましたが、上写真の株が毎冬屋外越冬しているにもかかわらず、追加の2株は冬を超すことができませんでした。
(以後、入手できなくなったこともあり、今は1株のみ生き残っています。)
それ以来、あまりにも寒い日の夜は室内に取り込むようになりました。

他の T.latifolia は少し気難しい面があるものがあると聞きますが、本変種はかなり丈夫です。
夏も午前中の2~3時間ほど直射日光に当たっていますが、暑さに弱い面は全く見受けられません。
よく日に当てて、氷点下の寒ささえ避けられれば、簡単に育てられると思います。

管理方法は下写真のとおりで、日当たりのいい場所を選んで鎮座させています。
















発根が著しいので、着生させたり植えこんだりする方がいいことは分かっているのですが、敢えて「置きチラ」を追求している1株です。

10/17/2015

オンリーワン

もう10年以上チランジアを栽培していますが、時々、滅多にお目にかかれない掘り出し物に当たることがあります。
この中でも、「今回のこの植物を枯らしてしまうと2度目はない。」ような植物に、かつて何度か出会っています。
そのうち、今日は2つを紹介します。

この植物は、かつて T.yuncharaensis の白花(本来の T.yuncharaensis は青花です。)を数株入手した際に紛れていたもので、本ブログのプロフィール画面にも使っているお気に入りの植物です。
この植物はたまたま紛れていたものですので、当然、今後入手することはできません。




















株の姿は明らかに T.yuncharaensis なのですが、そもそも注文した白花でないし、花弁も T.yuncharaensis というよりは T.xiphioides ssp.xiphioides var.tafiensis に近いですね。
そして、決定的なのがその花序の太さです。

ではこの植物は何なんだ?ってことになり、いろんな人に聞いてみましたが、結局分かりませんでした。
そのうち、話の流れで開花後の花序をウイーン大学の W.Till博士に送ってくれ、ということになり、同定の依頼を兼ねてその話に乗ってみることにしました。
その結論は結局出なかったのですが、「花序の形状が T.cardenasii に近く、T.yuncharaensis (白花)の産地にも T.cardenasii が自生していることから、それらのハイブリッドの可能性が高い。」ということになりました。

結論はともかく、我が家ではこれをベストクローンとして維持していくつもりです。
しかし、毎年の開花は到底望めないうえ、本クローンは T.xiphioides ssp.xiphioides var.tafiensis と比較しても開花時期が圧倒的に短いという特徴があります。
開花の翌日には花弁が萎れるので、全花弁同時開花で見ごたえがある反面、約1日の開花時期を見逃すと次の開花まで数年間待たされることになるのです。

次の植物は、これです。




















これは、T.Aristocrat という名前の園芸品種(交配種)で、T.ionantha と T.bourgaei の交配種となります。
かつて2006年の国際ブロメリア協会の会合(私は参加していません)に登場し、写真を見ただけの私でも非常にインパクトが強かったのを覚えています。
この園芸品種の作出者である J.Arden 氏の知人からたまたま譲っていただく機会があったのですが、1株のみの入手であり、かつ、その方ともう連絡が取れないこともあって、もう入手できないと思います。

この園芸品種に限らないことですが、園芸品種として登録された植物(有名どころで、T.Curly Slim)と同じ組み合わせで交配・実生した海外農場産の植物が、園芸品種と同じ名前で出回っています。
海外の農場で実生から栽培するので大量生産が可能ですが、当然、性質はバラバラになります。
園芸品種は大量の実生の中から素晴らしい性質を持つクローンを厳選して品種登録しているはずですので、海外農場で大量生産した植物がその園芸品種に敵うことはほとんどありません。
(その園芸品種を凌ぐクローンが出る可能性も否定はできませんが・・・)
そして何よりも、その園芸品種と同じ名前で大量生産した植物を売りさばくのは、園芸品種の作出者に対して失礼であると、個人的には考えています。

上記の事実を鑑み、数年後には「T.Aristocrat」の名前の交配種が大量に出回ることが予想されます。
でも、その植物を T.Aristocrat として認めたくないし、導入するつもりもありません。

上の写真は入手当時のものであり、緑葉種である T.bourgaei のように水好きなのでは、と考え、ミズゴケ植えにしていました。
しかし、全然発根している感じがしないので、今年、思い切って空の素焼き鉢の中にポン置きしてみました。

























旺盛とまではいきませんが、ポン置きしてから3カ月でそこそこ発根してきたので、しばらくはこのまま管理したいと思います。
性質は、寒暖にもよく耐え、非常に強靭です。