12/13/2015

Tillandsia chapeuensis var. turriformis

先日、Tillandsia chapeuensis var. turriformis を入手しました。
かつては、Tillandsia spec (Morro Chapeu) として出回っていましたが、2010年の Die Bromelie において Jan Claus 氏がこの植物を Tillandsia gardneri "Türmchen (Little Tower)" として紹介しました。
この際、本種の立派な開花姿も紹介されたのですが、その開花を見ると Tillandsia chapeuensis に酷似しているような気がずっとしておりました。
その後、2012年にこの植物が Renate Ehlers 女史により Tillandsia chapeuensis の変種として記載された時、ようやく心の中のモヤモヤが解消したのです。

















きれいな真っ白のトリコームを纏った美種ですが、残念ながら栽培は容易ではありません。
本変種が記載される大分前から sp 扱いで流通していたこともあり栽培経験はあったのですが、立て続けに失敗したこともあり、この植物から足が遠のいていました。
本変種の栽培経験がある方に聞くと、導入直後もしくは冬に枯らすという方が多いように感じます。
特に我が家の場合、冬に芯が黒くなって枯れるパターンでした。
Tillandsia gardneri や Tillandsia roseiflora が同じようなパターンで枯れることが多かったので、当初は冬の寒さが原因だと考え、暖房のかかった室内に取り込みました。
すると、ますます状況が悪化したので、窓際の明るい室内(当然、無暖房)に置くようにしたところ、普通に冬越しできるようになりました。
















これにより、この手の植物を冬の室内で枯らす原因が「光量不足」であるという私なりの結論にたどり着きました。
しかし、再挑戦しようと思った頃には流通がぱたっと止まってしまい、これまでの間、入手に至っておりませんでした。
ですので、 枯らさずに開花・繁殖させることを目標に、精進したいと思っております。

当然、冬は室内に取り込むのことになるのですが、なるべく明るいところに置くとともに、晴れの日には日光浴させるようにしています。
水を多めにやり日光をよく当ててやると、本来は反り返っている葉がまっすぐに伸び、生きている実感があります。
しかし成長はかなり遅いようで、国内での初開花を果たした藤川氏(開花写真)の所でも導入から開花まで7~8年かかったようです。

軽石を詰めた素焼き鉢に植えて、湿度を保持しやすい環境に変えてみました。
これが吉と出るか凶と出るかは、数年後に分かると思います。
















写真は、水をやった後の写真で、葉が緑っぽくなっています。
古い葉の部分には少し茶色の部分が見えているものの、植物体全体が緑色をしているということは、ひとまず健康である証です。
それが、芯に近い部分から茶~黒色に変色してくると、芯が腐っている証拠となります。
(本種は、水に濡れない限り、白いトリコームのせいで生死を判別しづらいです。)
















ともかく、今回の写真がこの植物の遺影となってしまわないよう、健康に育ててあげたいです。

11/15/2015

Tillandsia sprengeliana

今日は、チランジアの中でも人気度トップ5に入るであろう Tillandsia sprengeliana を紹介します。 

チランジアの栽培を始めたのは10年以上前になりますが、当時もホームセンターではいろいろな種類のチランジアが販売されていました。(当時は今以上に種類が少なく、お決まりのラインナップでしたが・・・)
その中でも、ひときわ高額で目に付くお方が前回の投稿にも登場したキセロ様ですが、通常サイズだと高くても5000円位といったところでしょう。
ホームセンターのチランジアしか知らない当時の私は、まさかこれ以上に高額なチランジアがこの世に存在するとは夢にも思っていなかった訳です。

ところが、その殻を破ってしまうきっかけとなったのが、今では愛好家仲間の1人である某氏がヤフオクで販売していた Tillandsia sprengeliana だったのです。
キセロ様は30cmぐらいの大きさで約3000円ですが、スプレン様は3cmぐらいの大きさで8500円(初入手時の価格)。
cm(直径)当たりの価格差は約30倍で、当時、かなり驚いた記憶があります。
といいつつも結局入手してしまい、この道に深入りしてしまうこととなったのですが・・・

最初は、暑さ・寒さに弱いと思っていたので、かなり乾燥気味に管理してしました。
その結果、ハダニの襲撃に遭ってしまい、衰弱してそのままお亡くなりに・・・
その後いろいろ調べたところ Tillandsia stricta と比較的近縁であることが分かり、高湿度の管理をするようになってからは順調に生育するようになりました。(ハダニは高湿度の環境だと発生しにくいです。)
数ある「ブラジル赤花」の中では、比較的管理しやすい方の部類の植物であると思います。

初入手の株は先述した通りもうありませんが、後にそれと同じであろうタイプを入手しています。
















真っ白いトリコームが他のタイプに比べて多く、サイズはやや小さめですね。
(あとで大きくなる可能性もありますが・・・)
花色も濃いようですが、我が家ではまだ未開花です。

次のタイプは、「内陸型」と呼ばれるタイプです。
















やや小さめの草体で、花序のブラクトが開いたような形状をしており、まるで花序自体が花びらのようです。
我が家には開花後の状態で届き、そのまま3つ子株を出しました。
残念ながら、このタイプも我が家ではまだ未開花です。

次に、「臨海型」と呼ばれるタイプで、現在流通している株のほとんどがこのタイプであろうと思います。
内陸型に比べ、花序のブラクトが閉じた形状をしているのが特徴です。
我が家の株は、ブラジル、リオデジャネイロ州のカボ・フリオという地域の小島で採集された株の子孫です。
2011年に開花直前の状態(下写真)で届き、無事に開花したのち子株を2つ付けました。
















さすがにそれから4年も経っているので、2つの子株のサイズ及び葉数は元の親株を上回っており、いつ開花してもおかしくない状態だと思います。

















2つの子株の他、株元から不定芽が出ていますが、こちらの方はとてもとても成長が遅いです。

おまけですが、上の臨海型と同産地で採集された、本種と Tillandsia geminiflora の自然交配種です。
















サイズは両種の中間で、株の形状は Tillandsia roseiflora に似ています。
トリコームの特徴は、T.geminiflora が勝っているような気がします。
そして、この株の悪い特徴ですが、開花してもいつも子株が1つしか出ないのです。
ですので、2012年に胴切りをしてみました。
(茎の途中で切る訳ではなく、開花済株と子株の双方が生育できる大きさを保ちつつ、子株を切り離すだけです。)
すると、目論見通り、3カ月ほどで3つの子株が出てきました。






























今は知人の温室で養生中であり、もう一人立ちできる大きさまで生育しています。
殖えにくい株を殖やす方法として「胴切り」は有効なので、同じ悩みを持つ方は試してみて下さい。

最後は、たぶん臨海型であろうこの株です。
















この株の出元は Alfred Blass 氏だそうです。
チランジアの愛好家として有名な方だったそうですが、亡くなったのが1983年であり、最近の愛好家はその名前さえ知らないと思います。
話は脱線しますが、国際ブロメリア協会の会報に Tillandsia rosea(今の Tillandsia carminea)とTillandaia brachyphylla(今の Tillandsia roseiflora)の記事を書いた方です。
この記事が Tillandaia brachyphylla に関する混乱の元になった訳ですが、まだインターネットも普及していない時代に書籍ベースで知識を収集し、これだけの文章を書く努力は並大抵のことではなかったと思います。

10/25/2015

置きチラ

皆さま、「置きチラ」という言葉を知っていますか?
おそらく、ご存じないでしょう。
なぜなら、私が勝手にそういう造語をしているからです。

園芸専門店やホームセンターに行くと、よく、Tillandsia xerographica(通称:「キセログラフィカ」「キセロ様」)がたくさん売っています。
CITESⅡに指定されているはずなのですが、輸出許可が簡単に出るからか、大量に出回っていますね。
寒さに注意すれば簡単に栽培できるうえ、非常に美しい植物なので、人気があるのも納得です。
残念ながら、一部の小型種以外は周年屋外栽培が可能な植物のみ育てるようにしているため、我が家にキセロ様はありません。

そのキセロ様は、大体、棚等の上に鎮座し、買ってくれる人を待っておられますが、葉の先の方が下方に巻き込んでおり、自らの体重を支える座布団のような働きをしていると思います。
そのような形状をしたチランジアのことを、私は「置きチラ」と呼んでいます。

我が家で「置きチラ」を目指しているチランジアは、これです。
















Tillandsia latifolia var. leucophylla です。
一目見ただけで植物名の分かった方は、かなりのチランジア通だと思います。
他の T.latifolia は普通に入手できると思いますが、この植物はなかなか目にすることがありません。
本変種は、上品な素肌と分厚い葉が魅力的だと思います。
















3年前に我が家に来たときは、結構ボロボロの状態でやってきました。
しかし、成長が意外に早く、ボロボロの葉は一掃され新しい葉に生え変わってきています。
2年前に2株追加導入しましたが、上写真の株が毎冬屋外越冬しているにもかかわらず、追加の2株は冬を超すことができませんでした。
(以後、入手できなくなったこともあり、今は1株のみ生き残っています。)
それ以来、あまりにも寒い日の夜は室内に取り込むようになりました。

他の T.latifolia は少し気難しい面があるものがあると聞きますが、本変種はかなり丈夫です。
夏も午前中の2~3時間ほど直射日光に当たっていますが、暑さに弱い面は全く見受けられません。
よく日に当てて、氷点下の寒ささえ避けられれば、簡単に育てられると思います。

管理方法は下写真のとおりで、日当たりのいい場所を選んで鎮座させています。
















発根が著しいので、着生させたり植えこんだりする方がいいことは分かっているのですが、敢えて「置きチラ」を追求している1株です。

10/17/2015

オンリーワン

もう10年以上チランジアを栽培していますが、時々、滅多にお目にかかれない掘り出し物に当たることがあります。
この中でも、「今回のこの植物を枯らしてしまうと2度目はない。」ような植物に、かつて何度か出会っています。
そのうち、今日は2つを紹介します。

この植物は、かつて T.yuncharaensis の白花(本来の T.yuncharaensis は青花です。)を数株入手した際に紛れていたもので、本ブログのプロフィール画面にも使っているお気に入りの植物です。
この植物はたまたま紛れていたものですので、当然、今後入手することはできません。




















株の姿は明らかに T.yuncharaensis なのですが、そもそも注文した白花でないし、花弁も T.yuncharaensis というよりは T.xiphioides ssp.xiphioides var.tafiensis に近いですね。
そして、決定的なのがその花序の太さです。

ではこの植物は何なんだ?ってことになり、いろんな人に聞いてみましたが、結局分かりませんでした。
そのうち、話の流れで開花後の花序をウイーン大学の W.Till博士に送ってくれ、ということになり、同定の依頼を兼ねてその話に乗ってみることにしました。
その結論は結局出なかったのですが、「花序の形状が T.cardenasii に近く、T.yuncharaensis (白花)の産地にも T.cardenasii が自生していることから、それらのハイブリッドの可能性が高い。」ということになりました。

結論はともかく、我が家ではこれをベストクローンとして維持していくつもりです。
しかし、毎年の開花は到底望めないうえ、本クローンは T.xiphioides ssp.xiphioides var.tafiensis と比較しても開花時期が圧倒的に短いという特徴があります。
開花の翌日には花弁が萎れるので、全花弁同時開花で見ごたえがある反面、約1日の開花時期を見逃すと次の開花まで数年間待たされることになるのです。

次の植物は、これです。




















これは、T.Aristocrat という名前の園芸品種(交配種)で、T.ionantha と T.bourgaei の交配種となります。
かつて2006年の国際ブロメリア協会の会合(私は参加していません)に登場し、写真を見ただけの私でも非常にインパクトが強かったのを覚えています。
この園芸品種の作出者である J.Arden 氏の知人からたまたま譲っていただく機会があったのですが、1株のみの入手であり、かつ、その方ともう連絡が取れないこともあって、もう入手できないと思います。

この園芸品種に限らないことですが、園芸品種として登録された植物(有名どころで、T.Curly Slim)と同じ組み合わせで交配・実生した海外農場産の植物が、園芸品種と同じ名前で出回っています。
海外の農場で実生から栽培するので大量生産が可能ですが、当然、性質はバラバラになります。
園芸品種は大量の実生の中から素晴らしい性質を持つクローンを厳選して品種登録しているはずですので、海外農場で大量生産した植物がその園芸品種に敵うことはほとんどありません。
(その園芸品種を凌ぐクローンが出る可能性も否定はできませんが・・・)
そして何よりも、その園芸品種と同じ名前で大量生産した植物を売りさばくのは、園芸品種の作出者に対して失礼であると、個人的には考えています。

上記の事実を鑑み、数年後には「T.Aristocrat」の名前の交配種が大量に出回ることが予想されます。
でも、その植物を T.Aristocrat として認めたくないし、導入するつもりもありません。

上の写真は入手当時のものであり、緑葉種である T.bourgaei のように水好きなのでは、と考え、ミズゴケ植えにしていました。
しかし、全然発根している感じがしないので、今年、思い切って空の素焼き鉢の中にポン置きしてみました。

























旺盛とまではいきませんが、ポン置きしてから3カ月でそこそこ発根してきたので、しばらくはこのまま管理したいと思います。
性質は、寒暖にもよく耐え、非常に強靭です。

6/27/2015

Tillandsia xiphioides

この T.xiphioides は、ボリビアの標高約2600mの場所で採集された株の繁殖品です。
2010年に導入して以来、我が家では2回目の開花となります。
2011年に1回目の開花をし、それ以降、全長が約2倍となるまで成長しました。
















T.xiphioides の中でも長茎になりやすい傾向のあるタイプで、私のお気に入りでもあります。
長茎になりやすい株としては、Köhres Kakteen で入手可能な T.xiphioides ssp. xiphioides の名前で販売されている株が最も入手しやすい株だと言えます。
でも、この株はより葉が長くなり、少し違うような印象を受けています。
また、T.xiphioides ssp. prolata とは葉の質感が全く違います。

我が家では2回開花していますが、今回も綺麗に咲くことができました。
















前回の開花から4年かかるほどであり開花自体稀な種類ではありますが、銀葉普及種の中ではもっともきれいな開花を見せてくれる種であると思います。

5/25/2015

Tillandsia violaceiflora

2012年に新種として記載されたばかりの、Tillandsia violaceiflora が開花しました。
勿論、記載者の L.Hromadnik 氏による採集株からの子孫であり、完模式標本と同じ採集番号である「HR7176」の株となります。
















花序はピンクですが、花弁は紫色です。
本種は T.argentina の近縁種と言われていますが、みた感じだけではそのように見えませんね。
















ただ、細長い花弁がまっすぐ伸び、その先端が反るような咲き方をする点は、T.argentina と似ているように感じました。
あと、花弁が反りかえる頃になると、当初紫色であった花弁がピンク色に変色しているような感じでした。

5/06/2015

Tillandsia kautskyi

ブラジル赤花の定番、Tillandsia kautskyi です。
我が家には、滝沢氏による実生ベストクローン、藤川氏のところから来たR.kautsky 氏由来の株、L.Hromadnik 氏による採集株及びその他の株があります。

滝沢氏による実生ベストクローンは、2007年に我が家にやってきた株です。それ以来8年も栽培していますが、未だに開花したことがありません。
でも、調子悪い訳ではなく、毎年旺盛に発根していますし葉数も確実に増えています。

R.kautsky 氏由来の株は、開花済間もない状態で入手し、今2株の子株が大きくなってきたところです。
来年までには開花サイズまで成長することでしょう。

L.Hromadnik 氏による採集株は、数株保有しています。
いずれの株も、株の中心部分がすぼまず、ややロゼット状になるのが特徴です。
2012年に導入した株は、2回の開花を経て、今は7株のクランプに成長しています。
(2014年3月に開花前の状態で紹介した株)
今回の株は、2013年に導入して以来、未開花であった株が開花したものとなります。
















このタイプの株の特徴なのか、栽培環境の問題なのかはわかりませんが、開花前にはピンクの花苞であるものの、いざピンクの花弁を出すと花苞が真っ白になってしまいます。
花弁に色素を奪われるのかどうかは、原因不明です。

あと他にも、開花準備中の株が多数あります。ひとまず確認できているのは、
Tillandsia tenebra
Tillandsia streptocarpa
Tillandsia xiphioides
Tillandsia violaceiflora
Tillandsia muhriae
の5種です。

Tillandsia violaceiflora は2012年に記載された新種で、T.argentina 辺りの近縁種です。
Tillandsia muhriae については、Köhres Kakteen からやってきた紫花でも、T.alberi (現在では、T.muhriae のシノニムとされている。)でもない、白花のTillandsia muhriae です。
これらの2種については、特に、開花を心待ちにしています。